テクノロジーで解決する女性の社会課題。企業、行政、街で連携する
2023/01/18
生理の貧困問題 、妊活や性教育等、女性を取り巻く社会課題はいまだ山積。そこで、「テクノロジーで解決する女性の社会課題」と題しセッションを行いました。
渋谷を起点にした官民連携プロジェクトを推進する区や外郭団体で働く女性の立役者たちと一緒に、独自のアイデアで課題に取り組むスタートアップの提案を聞き、どのようにして社会的なムーブメントを起こし女性が抱える課題を解決していくかを公開討論。これから行政と連携して事業を拡大したい方に参考になれば幸いです。
本記事は、SK-IIと渋谷区、meeTalkが連携し、共同で開催された#女性起業家支援プログラム の一部です。女性のビジネスオーナーを支援するため、事業をを継続・発展させるために必要な「学びとネットワーク」を得られる場を提供。多くの女性起業家たちが集いました。(2021年に開催されたレポートです。)
【登壇者】
二宮 未摩子(株式会社TRULY CEO)
中村 寛子(fermata株式会社 Co-founder / CCO)
小池 ひろよ(一般財団法人渋谷区観光協会 理事 兼 事務局長)
長田 新子(一般社団法人渋谷未来デザイン 理事 兼 事務局次長)
街からの視点、起業家からの視点などそれぞれの立場から社会を変える4名のゲスト
まずはセッションの冒頭で、豊富な経験を持ち、社会課題に取り組む起業家でもある登壇者の皆様から、自己紹介とこれまでのご経歴、携わられている事業と目指していることなどをお話しいただきました。
渋谷区としての取り組みを担う長田さんと小池さんの司会進行の元、起業家として女性の社会課題に取り組んでいる中村さん、二宮さんの視点でのお話しを交え、同じ課題に違う視点から取り組む皆さんならではの活気溢れるディスカッションとなりました。
◼︎渋谷という「街」の視点で取り組む長田さん、小池さんのご紹介
長田 新子さん(一般社団法人渋谷未来デザイン 理事 兼 事務局次長)
情報通信や企業システム・サービスの営業、マーケティング及び広報を経て、2007年から2017年までレッドブル・ジャパンでのコミュニケーション統括やCMOを担った後、2018年より現職に就任。また、自身が代表を務めるNEW KIDS株式会社を通して、企業ブランドやコミュニティ、アスリートイベントなども支援。マーケティング・PR関連のアドバイザーや、マーケターキャリア協会の理事として、キャリア支援も行っています。2020年5月には『アスリート×ブランド ―感動と興奮を分かち合うスポーツシーンのつくり方―』(宣伝会議)を上梓されました。
一般社団法人渋谷未来デザインでは、「THINK→ACTION」を掲げ、渋谷の可能性と都市の未来についての考えをアクションやムーブメント化することで社会課題解決へ取り組んでいます。街づくり視点での「渋谷」は、住民だけでなく、働く人や訪れる人を「渋谷民」として包括・包含し、街のイノベーションプラットフォーム化を促進しています。
【渋谷区 持続的な発展のための7つの分野】
1. 子育て・教育・生涯学習
2. 福祉
3. 健康・スポーツ
4. 防災・環境・安全・エネルギー
5. 空間とコミュニティのデザイン
6. 文化・エンタテイメント
7. 産業振興
を軸とした、「イノベーション事業」「インキュベーション事業」に取り組んでいます。その中で、長田さんは主に、11月に予定している「SOCIAL INNOVATION WEEK」や「バーチャル渋谷」に携わっておられます。長田さんが携われている領域は、大企業からスタートアップ企業まで、多くのパートナー企業の方と作り上げる事業がほとんど。
ご自身も起業された立場として、
・自分:自分ごととしてどれだけできるか
・仲間:巻き込み力を持ってリードできるか
・共創:ステークホルダーとの信頼を築けるか
・社会貢献:社会的な意義を持っているか
をモットーに取り組まれているそうです。
長田さん「本セッションを聞いてくださったり、ご興味を持ってくださった皆様とも、ぜひ連携する機会が作れれば!」
Web: 渋谷未来デザイン
小池 ひろよさん(一般財団法人渋谷区観光協会 理事 兼 事務局長)
公助から共助へをモットーに、シェアリングエコノミーやソーシャルキャピタルにより豊かな社会を目指したいと考え、2016年より(社)シェアリングエコノミー協会事務局次長、(株)スペースマーケット社長室ブランド戦略などに従事。オンライン旅行業業界の一員として国際カンファレンスの企画・運営やオーガナイズなどの領域でも幅広く活動をされています。
一般財団法人渋谷区観光協会は、
・世界に誇る観光資源を作る
・次世代の観光インフラを作る
・複合的な観光経済活性化を実施する
をミッションに活動。
レジャーやトラベルだけではなく、世界と戦える街としての渋谷を作るべく、「本部事務局運営/観光案内/観光インフラ整備/観光資源開発・整備」の4つの事業を行っています。
長田さん同様に、住んでいる人や働く人や遊びに来る人など来街者の含めた街の魅力づくりに取り組んでいますが、多種多様な発信活動にも注力をされています。
パブリックアートをどう街にインストールするか、街で活躍する個人をどう知ってもらうか?といった支援のみならず、最近では「HELLO MY ONLY SHIBUYA」としてビーガンフレンドリーな情報に特化する等”その人ならではの楽しみ方”にフォーカスした発信、Z世代と共に社会課題に取り組む企画「SO GOOD!! シブヤ部」なども行っているそうです。
若い世代の方の視点や、訪れる方一人ひとりの楽しみが交わり、渋谷の街に新たな魅力が
生まれるよう、取り組まれています。
◼︎女性の社会課題に「起業家」側から取り組む中村さん、二宮さんのご紹介
本セッションのテーマでもある、「女性の社会課題」に起業家として取り組んでいるお二人の歩みや取り組まれていること、目指していることについてご紹介します。
中村 寛子さん(fermata株式会社 Co-founder / CCO)
グローバルデジタルマーケティングカンファレンス主催企業にて、6年間主にコンテンツプログラムの責任者として従事。2018年より女性のエンパワーメントを軸にジェンダー、年齢、働き方、健康の問題などまわりにある見えない障壁へ問いを立てるビジネスカンファレンス「MASHING UP」の企画プロデュースを経て、2019年、杉本亜美奈さんとfermata株式会社を共同創業されました。
▼fermataで取り組んでいるフェムテック(Femtech)とは?
フェムテックとは”女性の切実な需要”から生まれた新たな市場。2012年~2013年頃、ドイツ「Clue」創業者Ida Tin氏が投資家に向けて需要を示すために「Female+Technology」で作った造語ですが、一般的に女性特有の健康課題を解決するためのプロダクトや、テクノロジーを用いたデバイスやアプリ、サービスなどを指してます。
新しい市場ですが、グローバルでの投資額推移も2020年は昨対比170%の伸び、日本でも経産省発表によると、フェムテックの経済効果は2025年には2兆円規模と推計されています。日本市場においても97社・サービスが市場を担っているそうです。
なぜ、今フェムテックが必要なのか?
時代と共に、女性のライフスタイルは大きく変化し、生涯月経数も50~100回だった昔の女性に比べ、現在は450~500回まで増加。変わる社会と変わらない生理機能の間で生じる負担に対し、今を生きる女性のQOLを向上させるために誕生した市場です。また、この女性特有のウェルネス課題は社会全体の課題(労働損失等も含め)として捉えられていますが、まだタブー視されてきた領域でもあります。
fermataがそのギャップをなくすためにやっている事業と強み
タブー視されてきた領域ゆえに、今見えている部分は氷山の一角に過ぎず、悩みや課題に気付いていない人や選択肢を知らない人、その入手方法が分からない人が多く存在。そのギャップをなくすためにも、一般のお客様に向けた「toC事業」で商品やサービスをお届けするだけではなく、事業創出やリサーチなどを行う企業をサポートする「toB事業」、フェムテックの「スタートアップに向けたサポート」を行っています。
日本市場を牽引するfermataの強みとこれから
欧米からアフリカまでアジア随一のグローバルネットワークや、国内で約5000人規模のフェムテック/ウェルネスに興味を持つユーザーコミュニティを持つ点や、海外の製品に対しても成分や機能の安全性・快適性などが日本市場に合うかどうかの臨床研究を含めた医療機関や各省庁との連携、企業の事業創出から流通までの一気通貫サポートなどを強みに、日本市場を拡げています。10月22日(金)~24日(日)には、大型のイベントとして「Femtech Fes!」を六本木ヒルズにて開催予定。世界各国の150のフェムテック製品をはじめとした良質な「モノ」と熱量の高い「ヒト」の出会う機会の創出をされています。
fermata:フェムテック専門オンラインストア
二宮 未摩子さん(株式会社TRULY CEO)
広告会社にて、営業職として広告マーケティングを担う中、つわりによるキャリアの中断を経験。復帰後、女性の美容・健康をテーマとした新商品・サービス開発専門の社内プロジェクトを発足し、2020年6月に女性の更年期に寄り添うフェムテックサービス「TRULY」を企業。
更年期障害市場の現在
まだまだタブー視されている領域ではあるものの、女性の2人に1人が50歳以上になる日本では、市場規模予想は3500億円と大きなものに。更年期世代(45~59歳)だけでも約1200万人、ホルモン減少の初期段階であるプレ更年期世代(35~44歳)含めると約2000万人とボリュームは大きい。
対象者の主な悩みは「情報やサービスが少なく知識がないこと」「忙しくて病院に行く時間がないこと」「恥ずかしくて相談できないこと」の3つが挙げられ、自覚があっても対策にたどり着きにくかったり、相談をしづらいといった側面があります。
TRULYでは「女性のキャリアのピークと更年期との重なり」に課題感を持ち、社会・企業としての理解が進むよう、知る(オンラインメディア)、調べる(セルフチェック)、相談する(チャットサービスによるオンライン相談)を軸としたプラットフォームをtoB、toC向けに提供しています。
現在、渋谷区とも実証実験中。働く女性のウェルビーイング向上を目指し、我慢せず、理解が進み、キャリアをあきらめない社会づくりを目指して取り組んでいるとのことです。
TRULY:男女の更年期をサポート
◼︎ディスカッション。なぜこの分野に取り組むのか?
女性の社会課題に取り組んでいる起業家のお二人が、なぜその事業に踏み切ったのか?といった質問や実感値を交えて行われたディスカッションをお届けします。
長田さん(以下、長田):
なぜ、フェムテック分野でその事業をやろうと思ったのでしょうか?
fermata中村さん(以下、fermata中村):
医療やウェルネスのバックグラウンドはありませんが、自分自身が生理による体調不良に悩み、低用量ピルに出会った際「人生って1つの解決策でこんなに変わるんだ!」と感じた原体験が、何かウェルネスに関わることをやりたいという気持ちをに繋がっていきました。
自身でも立ち上げをしたビジネスカンファレンス「MASHING UP」で「キャリアとお金と恋愛は取り戻せるがウェルネスは取り戻せない」というセッションをやってみて、ウェルネスの事業をやりたい気持ちは強くなりましたし、共同創業者である杉本亜美奈さんとも出会いました。2017年にベルリンで「Clue」のみなさんから直接フェムテックを教えていただく機会にも恵まれたことも、大きな原動力となりました。
小池さん(以下、小池):
まだ市場規模がなく、これから作る立場としてどう取り組んできましたか?
fermata中村:
起業当初「フェムテックプロダクト」を作ろうと考えていました。けれども、女性がこれからの社会を生きる上で必要不可欠な領域にもかかわらず、市場そのものがないことに対して「市場を作る」という方向へ事業計画をピボットをして取り組んで2年目になります。
小池:
自分ごとの原体験がビジネスにつながる側面は大きいのでしょうか?
TRULY二宮:
結果的にフェムテックになっているものの「大人世代の女性に向けた信じられる情報提供をしたい」という目的でビジネスを考えていました。やはり女性ホルモンは切っても切れない関係。自身でも妊娠時のつわりが重くキャリアへ影響が出たことで、次は更年期だろうと恐る恐る調べるうちに、情報の少なさや受け皿のなさに気づき、起業に至りました。
長田:
更年期でキャリアが断たれるケースってあるんですね
TRULY二宮:
キャリアの継続を迷う方が7割、退職された方が3割いることも、ショッキングな内容であり、企業にとっても社会にとっても大きな課題だと思います。
小池:
女性は、痛みをついつい耐えてしまう部分もありますよね
fermata中村:
そうですね。特に20代30代はまだホルモンがカバーしてくれている部分も大きく、ついつい無理してしまう側面もあると思います。
長田:
今取り組んでいる中で感じる課題感ってありますか
fermata中村:
市場を作っていくという意味では、土壌がないので規制の問題は必ずあります。この点はフェムテック議連などを通じたアプローチも進んで来ています。企業と関わっていくという意味では、「フェムテックを入れるとどれだけ生産性が上がるんですか?」「女性活躍はもうやってるからいらないです!」と言われることもあります。結果論として生産性は上がるけれども、「一人ひとりのQOLが上がる」という視点にディスカッションが進まないと感じる部分はあります。
また、「解放した先にある未来」をちゃんと伝えて行く必要は感じています。オープンに話せるようになった後に生まれる課題をキャッチし、描いていくことも大事だと考えています。
TRULY二宮:
更年期というテーマも、事業としても課題はとても多いです。市場を作る難しさは段階的にあって、更年期は「男性に理解を」のもっと手前に「女性自身の更年期に対するネガティブな気持ち」が払拭できるよう伝えて行く必要性を感じています。更年期は男性にも起きるものでもあり、互いにオープンに話せたり、お互いに耳を傾けられるように将来的にしていきたいと考えています。
長田:
街(行政)との取り組みは起業する上でどうあったら嬉しいですか?
TRULY二宮:
自治体が動いてくれるおかげで社会ごと化できる側面が大きいものの、アプローチの仕方が分かりやすいとより嬉しいなと思っています。
小池:
今回の渋谷区の実証実験の募集はどのように探されましたか?
TRULY二宮:
当初渋谷区がここまでスタートアップ企業支援をしているとは知らなかったものの、自社が渋谷区に登記があること、街が好きだったこともありアプローチを続けた結果だと思います。
小池さん:
行政の方とやり取りする中で苦労したことはありますか?
fermata中村:
行政の方とお話しする際に、パイオニアとしてよりも「他の自治体はどこがやっていますか?」と事例を求められることがとても多いです。
TRULY二宮:
渋谷区さんは別格に先進的だと見られている部分はあり、他の自治体の方にも影響が大きいと思います。
長田:
もっと自治体とやってみたいことや、すでにやっていることはありますか?
fermata中村:
日本はとても災害が多いので、生理用品の災害備品などの見直しなどの側面でも、ぜひご提案させていただく機会を増やしていきたいと思っています。
◼︎最後に、同じ起業家やこれから挑戦する方へのメッセージ
fermata中村:
フェムテックに関してだと「課題が顕在化されていない」という部分が大きく「個の課題」が市場を広げています。「自分を少しでもハッピーにするもの」をぜひ見つけて欲しいと思います。
起業に関しては、私は30歳を超えてから起業をしたのですが、20代の方に比べ体力は負けてしまうものの、経験値やコネクションなどは多く、活かせる部分をぜひ駆使して欲しいです。会いたい人がいたら聞くのはタダ!なので、アプローチはどんどんした方がいいと思います。ぜひ、今後も様々なプロダクトやサービスが生まれることを楽しみにしています。
TRULY二宮:
学生ベンチャーも増えていますが、自分自身も想い一筋で飛び込める年齢ではありませんでした。ただ、課題が顕在化していない分野で頑張るには、想いはとても重要であり、自分自身のためにも返ってくるという部分が支えになると感じています。不安や相談も色んな人に話していくことで、味方や仲間が生まれていき、動くことがとても大切だと思います。
—
自身の原体験と想いにつながり、新しい市場を生み出していくビジネスを行うお二人から、「制約条件にフォーカスせず、年齢や経験もご自身の強みとして活かすこと」「アプローチはどんどんやっていくこと」という、参加者の方にもとても心強いメッセージで締めくくられたセッションとなりました。
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概要:女性起業家・事業主のビジネスをサポートする支援プログラム
主催:SK-II、meeTalk
協力:渋谷区、Facebook Japan、Google
ライター:平野陽子
他にも続々と、講義・トークセッションのレポートを公開していきますので、ぜひチェックしてみてくださいね!
👇プログラムのレポート記事まとめはこちら
女性起業家支援プログラム|meeTalk|noteSK-II、meeTalk、渋谷区連携。新型コロナウィルス感染症の影響を受けた、首都圏東京で中小ビジネスを経営する女性起業note.com
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