D2Cの先駆者!FABRIC TOKYOの実例から学ぶ、D2Cの基本と次世代の小売戦略 【 #女性起業家支援プログラム レポ】

2023/05/19

「D2Cの先駆者!FABRICTOKYOの実例から学ぶ、D2Cの基本と次世代の小売戦略」のレポートをお届けします。

ソーシャルコマースにおいて物や体験を売ること自体はスタートに過ぎません。メーカーやブランドが、自社で企画・生産した商品を、小売業者やプラットフォーマーを介さずに、自社のソーシャルコマースサイトやECサイトにて直接消費者に販売するしくみのことをD2Cと呼びますが、コスト削減だけでなく、顧客データが直接収集できる、ブランディングしやすいなどの利点があり、近年注目を集めているビジネスモデルです。

本セッションでは「D2Cの基本とこれからの時代の小売」について、この分野で注目されているブランドを代表し、株式会社FABRIC TOKYO 代表取締役CEOの森雄一郎さんより、自社の取り組みの事例を共有しながら解説いただきました。D2Cの事業を経営するにあたり抑えるべき基本事項を先駆者の先輩から学べる講義の内容を早速見ていきましょう!

画像

【D2Cビジネスとは】
単なる小売りではなく、IT企業の手法を用いて、顧客の声を直接聞きながらモノを作るのがD2Cの事業。店舗、Web、SNSなど複数のチャネルで直接顧客と接点を持てるビジネスであり、最も距離近いブランドだからこそ、ビジョンの伝達やダイレクトな魅力訴求、顧客データ分析・改善が事業成長のカギになります。

本記事は、SK-IIと渋谷区、meeTalkが連携し、共同で開催する #女性起業家支援プログラム の一部です。女性のビジネスオーナーを支援するため、事業をを継続・発展させるために必要な「学びとネットワーク」を得られる場を提供。多くの女性起業家たちが集いました。

■ FABRIC TOKYO 創業に至るまで

画像
 Twitter @yuichiroM

森さんは、学生時代であった2007年にファッションメディアを立ち上げ。2009年にはファッションショー企画会社を、2010年にソーシャルアパートメントの営業・マーケティングを経験されたのち、2012年に一度起業しましたが複数事業を閉鎖。

2013年メルカリの創業タイミングに際し社会人インターンとして修行のつもりで同社に参画し、2014年にこれまでの様々な経験培った知見を活かし、FABRIC TOKYOを立上げられました。現在、売上も15億円規模、従業員数も120名の企業へと成長を遂げています。

■ FABRIC TOKYOってどんなブランド?

画像
公式ホームページより

FABRIC TOKYOは「Lifestyle Design for ALL だれもが自分らしいライフスタイルを自由にデザインできるオープンな社会をつくる」をミッションに掲げ、洋服のD2C事業を手掛けています。

一般的に、「敷居が高そう」「値段も高そう」「時間かかりそう」といったハードルの高い印象を持たれるオーダースーツを「もっと気軽に」「適正な価格で」「いつでも買える」にできるブランド体験を提供。また、実店舗でも「誰でも気軽に入ってこれる」を大切に「売らない店舗」に近い運営。

その代わり、お客様には気軽に「採寸」をしていただけるようにし、サイズのクラウド登録保存とオンラインオーダーができる「Smart Order」というサービスを展開しています。

ブランドコンセプトには「Fit Your Life.」を据えて、体型にフィット&ライフスタイルにフィットするD2Cビジネスウェアブランドを理念とし、今までオーダースーツを身近に感じてなかった方、規制サイズでの着こなしに満足していない方をターゲットにしているそう。

画像

Web: FABRIC TOKYO
オーダースーツやオーダーシャツをネット通販で購入できるブランド

■ 従来のアパレル企業との違いは「店舗の数や立地に売上やコストが依存しない」こと


従来のアパレルの事業モデルでは売上成長に店舗拡大を前提にしていましたが、オンラインで完結するビジネスモデルと採寸を中心に小型かつ視認性を問わない店舗づくりなどがFABRIC TOKYOのコスト競争力や成長性に寄与しているそうです。
9割以上のお客様はWeb上でブランドを見つけ、サイトや店舗に訪れて購入に至るのですが、来店は基本一度だけで、その後のリピート購入やコーディネートアイテムの追加購入などはほぼオンラインで行われています。

画像

■ FABRIC TOKYO流「D2CやDXのノウハウ」

DXが必要な最大の理由は「EC化率」の上昇。2025年までに24%程度になると言われる成長市場であり、様々な買い物がオンラインに移行する以上、D2CやDX化は必然の流れです。

DXやデジタル化の「Tips」や「HOW」は世の中に溢れていますし、コロナ禍で小売業全体の厳しい状況も多く語られています。けれども、コロナ禍以前から、人々の嗜好、価値観、ライフスタイルが多様化した現代では、顧客ニーズそのものが複雑化・多様化しているということは変わりません。昔ながらのビジネスをしているのではなく、複雑化・多様化した顧客ニーズに対応することがDXやデジタル化の一番重要なポイントです。

「全て顧客視点で考える時代になった」という認識が大事
その為には…
・顧客の嗜好、価値観の変化、時代の変化などを常にキャッチアップし続けること

・既成概念や組織の力学などを前向きに捨てること

また、D2Cは「顧客と直接つながる=顧客を理解すること」。実現する手段としてのデジタルがあり、商品が世に出るまで時間がかかる小売業やメーカーでは強烈な想いや社会価値といった「WHY(ビジョン)」が必要になります。

画像
上記のことを表す図

D2Cはいわば顧客を中心に「UX(経験)」「LTV(生涯価値)」「Customer Success(成功)」を積み上げて行くビジネスモデルです。その中で、FABRIC TOKYOも、現在の市場とお客様の好みに応えた良質な経験を提供する存在(Smart Order)から、市場をリードしお客様の「変身」を約束し育てる存在(Fit Your Life.)への成長を目指しています。

■デジタル時代におけるリアル店舗の必要性


一方で、リアル店舗は絶対必要だとも考えています。その理由は「リアルな体験を通じて、記憶に残るブランドになるため」。デジタルな体験だけではすぐに記憶から流れてしまいますが、五感を使うリアルな体験の方が長期的な記憶に残ります。D2D時代のリアル店舗の役割は「顧客とのエンゲージメントを深めること(没入型体験を通じた、価値のあるブランドを目指す)」の他に「ECサイト単体に比べて顧客獲得コストを下げること」があります。

インターネット広告の競争率は10年前と比べてもかなり上がっており、広告を出してもなかなか見つけてもらえなくなっています。FABRIC TOKYOでは、オンラインとリアル店舗を組み合わせることで、スケール規模と成長速度を上げることが出来ると考えています。

D2Cでは「データ is King」
D2C事業を続けると様々なデータが蓄積され、ブランドの改善がしやすくなります。お客様がどのようにしてブランドにアクセスしてくれたのか、どの商品を購入しどのくらいの満足度なのか、タッチポイントやカスタマージャーニーからサービス満足度はどのくらいなのかといったデータを活用し、より良いブランドを目指せます。

画像

■ D2Cの、その先へ

D2Cはこれまでアナログだったものがデジタル化しサービスに近づいていく流れですが、今後はEC単体での商売は難しく「小売(Retail)のITサービス化=Retail as a Service」という発想がより重要になっていくと考えています。

例えば、「サブスクリプションのサービス」と「モノをECで発売する(D2C)」をデバイスで繋ぐAppleのようなビジネスモデルが小売でも同様に広がって行くはずです。

モノを売るのが「ゴール」ではなく「スタート」になり「購入後の利用」に寄り添うRaaS(Retail as a Service)型ビジネスモデルへのシフトをFABRIC TOKYOは目指しています。

画像

■「Why?を明文化する」ワークショップ

前半はFABRIC TOKYOの歩みを例に、「D2Cとは」について講義をいただきましたが、後半では、参加者の皆さんと一緒に「ビジョンデザイン」に必要な“Why?”を明文化するワークショップを行いました。

画像

“Why?”を明文化するためには、ブランドエクイティ、ビジョン、創業ストーリーが明確なことが重要だそう。それらがはっきりしていることで、組織のロイヤリティ、顧客のファン化と資金調達、さらにメディアへの発信などが事業を大きく後押しをしてくれるようになり、採用活動でも非常に有効だそうです。

また、ブランドエクイティピラミッドの要素や「ブランドが選ばれるには」を実際の企業の例を踏まえてお話いただきました。ブランドエクイティピラミッドを作るには、

次の4つのステップをどう積み上げるかがポイントです。


1)記憶に焼き付くシンボルがある(一瞬でブランド名を思い出させる何か)
2)差別化する(そこでしか買えない、経験できない選ばれる理由の何か)
3)キャラ付けする(ブランドに個性や性格があると愛着を持たれる)
4)約束し、守り続ける(ずっと変わらない、そのブランドが提供し続ける価値を約束する、ミッションステートメント)

お客様がサービスを認知をするのは記憶や選ぶ理由が生まれるところから始まりますが、ブランドを作る際には順序が逆になり、下記のステップの通り「約束し、守り続けるもの」をきちんと決めるところからスタートします。

【STEP1:約束し、守り続ける】
ずっと変わらない、ブランドの存在意義や使命を長くなり過ぎない程度に2~3行にまとめます。使命は、それを聞くだけでワクワクし、インスピレーションを感じるものに。

【STEP2:キャラ付けする】
そのブランドの個性を決める。ユーザーとの心理的なつながり、愛着を生むような性格付けを行う。形容詞2~3個の組み合わせ。

【STEP3:差別化する】
競合サービスと比較した時の、差別化要素同質化要素を決める。それぞれ複数あってOK。ただし、1要素は1行に簡潔にまとめる。機能的な要素でも、感情的な要素でもOK。

【STEP4:記憶に焼き付くシンボル】
このプロセスは最後。ユーザーの記憶に残したいシンボルを決める。あらゆるタッチポイントで一貫して使え、ブランドロゴ、色、音、触感、何かしらのキャラクター、芸能人、キャッチコピーなどバリエーションは多数。

ブランドエクイティピラミッドでは一番上の「ミッションステートメント」が非常に大事。事業はビジョンと事業ミッションから生まれ、ビジョンは「10年後にタイムスリップして自分が見てきた世界」として定義しています。

後半はワークショップ

森さんからは、このビジョンの言語化とビジュアルイメージ化がおすすめされ、ワークショップの最後には、FABRIC TOKYOとして描いたビジョンと動画を見せていただきました。

D2Cの事業についてのお話しにとどまらず、ブランドを作る軸をどう据え、それが未来にどうつながるかを感じる濃密なセッションとなりました。

◼︎登壇者プロフィール

画像

森雄一郎 / 株式会社FABRIC TOKYO 代表取締役CEO
1986年岡山生まれ。大学生時代にファッションメディアで起業し、海外コレクションを取材するなどグローバルに活動。卒業後はファッションショー演出家アシスタントを経て、デザイナーズ不動産「ソーシャルアパートメント」の創業期とフリマアプリ「メルカリ」の創業期に参画。2014年に自身が服のサイズに困った経験から、オーダーアパレルD2Cブランド「FABRIC TOKYO」をリリース。5年で二桁億円規模に成長。

概要:女性起業家・事業主のビジネスをサポートする支援プログラム
主催:SK-II、meeTalk
協力:渋谷区、Facebook Japan、Google
公式HP:https://meetalk.org/sk2changedestiny/

ライター:平野陽子


講義やセッションのレポートを続々と公開していきますので、ぜひご覧ください

👇meeTalk 女性起業家支援プログラムの記事まとめ

女性起業家支援プログラム|meeTalk|noteSK-II、meeTalk、渋谷区連携。新型コロナウィルス感染症の影響を受けた、首都圏東京で中小ビジネスを経営する女性起業note.com

WILL YOU JOIN US?

社会を変える女性同士がつながり、
共に⾼め合う仲間となろう

グループに参加する

Stay Tuned!

ニュースレターで、最新の情報や今後のイベントの招待をいち早くお届けします

Be the first to know the latest announcements, networking invitations and more!